2018-05-25

こけら地蔵

昔々、あったぁど。

お爺さんが、佛様に先祖様代々の菩提のために、団子を上げて拝んだ。

すると、団子がポタンと佛檀から落ちて、口を開いた。

「あの山越え、タモニの山越えて、コケラの生えた地蔵の前さ、ゴロリ、ゴロリ」
と団子が歩き出した。

お爺さんは、団子に付いて行った。団子は、

「あの山越えて、タモニの山越えて、コケラの生えた地蔵の前さ、ゴロリ、ゴロリ」
と歩き続ける。

だんだんと行った。

山越え、沢越えて地蔵に着き、地蔵の傍(かたわ)らの穴の中にコロリと落ちてしまった。

お爺さんも穴の中さ入って行った。

穴の中には、古い地蔵さんが、沢山居だ。

コケラの生えている地蔵さんが言った。
「お爺さん、良くおいで下さった。今夜、ここに博打うちが一杯(いっぺえ)来るから、一番盛りの頃、地蔵の後から、コケコッコー、ケーヤと言え」
と言った。

そのうち、博打うちが、ガヤガヤやって来て、地蔵様の前で博打を始めた。

一番盛りの頃、お爺さんは地蔵の後から、
「コケコッコーケーヤ」
と教えられた通り、鶏の鳴き真似した。

すると博打うちめらは、
「夜が明ける」
とお金をその場に置いたまま、一目散に行ってしまった。

地蔵さんは、
「その金持って行け」
と言ったので、お爺さんは持って家に帰った。

お爺さんは、にわか金持ちになって、家で金勘定していたいっぱいあるので、勘定が終わらない。

そこさ、隣の欲深婆さんが来た。

「お爺さん、その沢山の金、何処から貰って来た」
と聞いた。

お爺さんは、正直者だがら昨日の話をした。

団子上げで、穴の中の地蔵様、そして博打うちの話をし、その金みんな貰ってきたごどをお婆さんに話した。

お婆さんは、
「良い話を聞いた。俺も団子上げよう」
と家に帰り、早速団子をつくり佛檀に上げだ。

団子が落ちないので、棒でつついて、わざわざ落としたが、団子が転ばないので、自分で、

「あの山越え、タモニの山越えて、コケラの生えた地蔵の前さ、ゴロリ、ゴロリ」
と唱えて、団子転ばして、それでも穴の処さ来た。

団子を穴に落とし、自分も穴の中さ入った。穴の中の地蔵様は口をきかない。婆様は夜になんの待った。

夜、博打うちが来た。そして博打を始めた。そのうち一人が、鼻をクンクンして、
「今夜はバー臭いぞ。バー臭いぞ」
と嗅えだ。

「その辺探して見ろ」
と言って、地蔵様のうしろに居た欲深婆さんは、捕まってしまった。

「夕(ゆん)べは、ひどい目にあった。このババァの奴だ。今夜は博打ぶって、このババァ汁にして食うべ」
と言って、婆さんは、ババァ汁にされて食われてしまった。

ざっと昔、さけえた。

村田 勉

 

『郡山のむかしばなし』

監修 東洋大学教授・文学博士 大島建彦
編 福島県郡山市教育委員会社会教育課
昭和59年11月30日発行

タグ:
関連記事

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です