こけら地蔵
昔々、あったぁど。
お爺さんが、佛様に先祖様代々の菩提のために、団子を上げて拝んだ。
すると、団子がポタンと佛檀から落ちて、口を開いた。
「あの山越え、タモニの山越えて、コケラの生えた地蔵の前さ、ゴロリ、ゴロリ」
と団子が歩き出した。
お爺さんは、団子に付いて行った。団子は、
「あの山越えて、タモニの山越えて、コケラの生えた地蔵の前さ、ゴロリ、ゴロリ」
と歩き続ける。
だんだんと行った。
山越え、沢越えて地蔵に着き、地蔵の傍(かたわ)らの穴の中にコロリと落ちてしまった。
お爺さんも穴の中さ入って行った。
穴の中には、古い地蔵さんが、沢山居だ。
コケラの生えている地蔵さんが言った。
「お爺さん、良くおいで下さった。今夜、ここに博打うちが一杯(いっぺえ)来るから、一番盛りの頃、地蔵の後から、コケコッコー、ケーヤと言え」
と言った。
そのうち、博打うちが、ガヤガヤやって来て、地蔵様の前で博打を始めた。
一番盛りの頃、お爺さんは地蔵の後から、
「コケコッコーケーヤ」
と教えられた通り、鶏の鳴き真似した。
すると博打うちめらは、
「夜が明ける」
とお金をその場に置いたまま、一目散に行ってしまった。
地蔵さんは、
「その金持って行け」
と言ったので、お爺さんは持って家に帰った。
お爺さんは、にわか金持ちになって、家で金勘定していたいっぱいあるので、勘定が終わらない。
そこさ、隣の欲深婆さんが来た。
「お爺さん、その沢山の金、何処から貰って来た」
と聞いた。
お爺さんは、正直者だがら昨日の話をした。
団子上げで、穴の中の地蔵様、そして博打うちの話をし、その金みんな貰ってきたごどをお婆さんに話した。
お婆さんは、
「良い話を聞いた。俺も団子上げよう」
と家に帰り、早速団子をつくり佛檀に上げだ。
団子が落ちないので、棒でつついて、わざわざ落としたが、団子が転ばないので、自分で、
「あの山越え、タモニの山越えて、コケラの生えた地蔵の前さ、ゴロリ、ゴロリ」
と唱えて、団子転ばして、それでも穴の処さ来た。
団子を穴に落とし、自分も穴の中さ入った。穴の中の地蔵様は口をきかない。婆様は夜になんの待った。
夜、博打うちが来た。そして博打を始めた。そのうち一人が、鼻をクンクンして、
「今夜はバー臭いぞ。バー臭いぞ」
と嗅えだ。
「その辺探して見ろ」
と言って、地蔵様のうしろに居た欲深婆さんは、捕まってしまった。
「夕(ゆん)べは、ひどい目にあった。このババァの奴だ。今夜は博打ぶって、このババァ汁にして食うべ」
と言って、婆さんは、ババァ汁にされて食われてしまった。
ざっと昔、さけえた。
村田 勉
『郡山のむかしばなし』
監修 東洋大学教授・文学博士 大島建彦
編 福島県郡山市教育委員会社会教育課
昭和59年11月30日発行
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