国指定天然記念物 鹿島大神宮の ペグマタイト岩脈
福島県郡山市西田町丹伊田字宮作239番地
此の岩石は、通称珪石(けいせいき:成分は主に石英)と言っております。この地方に大変多く産出した鉱物で、昭和10年代から昭和30年前半まで大きな鉱山が有り沢山採掘しておりましたが、現在は採掘し尽くしてしまった状態です。
この鉱石の用途は、ガラス、光学レンズ、光ファイバーの原料、又珪素(ケイ素)を含んでいることから、船舶用の珪素鉄を作るときの媒介物として戦時中は多く使われたものです。日本国内では、産出する地域が少ないので現在は殆ど海外からの輸入となっているようです。この様な状況で残っているのは、国内一ケ所であり、学術上からも大変貴重な鉱物で「国指定の天然記念物」になっております。
古来日本には、磐座、磐境の信仰があり、この様な巨岩には神様がお鎮りされる御神体として崇めたものであり、ここに鹿島大神宮の大神様を祭祀(おまつり)したもので、この巨岩を神社の御神体として信仰したものであります。
次に元福島大学の三本杉博士の撰文を御紹介致します。
ペグマタイト岩脈について
この岩脈は、花崗岩の一種で巨晶花崗岩とも云う。この種の岩石は、地球上に於いて地向斜といわれる凹地を形成し、そこに厚い推積岩を推積したような地殻の比較的不安定な地域即ち造山帯の弱線に沿って迸入した。
阿武隈山地は、日本でも最も有名なペグマタイトの産地であるが、このような弱線は高原の西縁部に稍南北に、北は宮城県伊具郡大張村より福島県伊達郡白根村、霊山町、川俣町、東和町を経て郡山市西田町、田村町高瀬を過ぎ宇津峯山を通り須釜村に達し更に南下して、野木沢・石川町を通って、山橋、鮫川村を貫き塙町に到るときはその勢力が弱まり、二つに分岐しその一つは、茨城県多賀郡高岡村に、他は久慈郡賀美村に達する。その全長は140キロに達する。多くのペグマタイトは、この弱線に沿って迸入し、その大きさ、形状は種々様々である。
構成する鉱物は、石英、長石、雲母、等を主とするがその上部又は縁辺部は、長石、雲母等の外に電気石、紅柱石、ザクロ石、キンセイ石、モナズ石、サマルスキー石、ヘルグリルン石等ウラニウム、トリラム、イットリウム等の稀元素を含む鉱物を含有するものが特徴である。
現在見られるこのペグマタイトは、岩帯の下部に相当し、主として石英の結晶の集合体であるが一部に長石も残存する。この岩石が生まれてから、約一億年の時が経過しその間に、地殻の変動、風化、浸蝕のため地表に突出したものであるが、その間の歴史は岩肌に強く刻み込まれている。これらの岩石を構成する石英及び長石は、光学レンズ、陶磁器等の重要な原料であるため殆ど採掘し盡されこの様な雄大な自然の状態を示すものは、稀である。従ってこのペグマタイトは、学術的研究資料として貴重なものである。
福島県文化財専門委員 福島大学教授 理学博士 三本杉巳代治